ミスター・ヴァーティゴ/ポール・オースター

ミスター・ヴァーティゴ
 かつて「空飛ぶ少年」だった老人の回顧録、という物語の
始まりを読んだ時はなんだかオースターらしくない話しだなあと
思った。でも読み始めてすぐにそんな気持ちは吹っ飛んだ。


少年が空を飛ぶなんてファンタジックな設定は物語の
導入部にしか過ぎない。残酷な事も、幸運な事もごたまぜで
押し寄せてくるやはりオースターらしい物語だった。
彼が経験したこと、関わった沢山の人々にどんどん引き込まれて
行った。最終章は酔った帰りの電車の中で一気に読み終えたが、
なんだか長くて感動的な映画を観た後のような満足感。