老人のための残酷童話/倉橋 由美子

老人のための残酷童話

老人のための残酷童話

数年前に「本当は残酷なグリム童話」といった童話が実はこんな
ひどい話だったんですよ、という暴露本的なのが一時期流行った。
ずっと以前に「大人のための残酷童話」を読んでた身としては、
ただグロさやエロさばかり強調してまるで底の浅い話だなあとあきれ果てて
いたので「老人のための残酷童話」が出た時はすごく楽しみにしてた。
なのにいつしか買うのを忘れていてすっかり読みそびれていた。


でも、今頃読んでも全く期待を裏切らない面白さ。「大人のための・・」と違って
現代的な話を扱ってるのに幻想的且つ現代的でほんと残酷。
歳を取るのがいろんな意味で恐ろしくなる。
やはり女性の作者だからか、おじいさんよりもおばあさんの怖さは秀逸。
「本当は残酷なグリム童話」の方も作者は女性だったけど、
筆力の違いは歴然としてるな。


可憐な美少女も、可愛い奥さんもいつしか歳を経て干からび、
情や欲が煮詰まって鬼婆になるんだな。そして、見た目は違ってるようでも
鬼婆も少女も結局中身は一緒だと。
ほんと怖いから、男性は読まない方がいいかも。
パウル・クレーの表紙もいい。最後に皮膚硬化症という病気で
亡くなったクレーと老人たちがかぶるんだけど、それはちょっと想像しすぎか。